配偶者が死亡した場合、遺族年金と自分の年金のどちらかを選択するときにも注意が必要だ。前出・田中氏が語る。

「遺族年金は全額非課税扱いですが、老齢年金は雑所得として課税されます。夫の死後、不動産収入や株式などの配当所得が入ってくるケースも多い。単に年金額の多いほうを選ぶのではなく、各所得税の計算をしたうえで判断すべきです」

 低年金で単身となった老親の介護保険料を安くするための裏ワザもある。例えば父親が亡くなり、母親と子夫婦が一緒に住んでいるケースで見てみよう。母親の収入が年金だけで80万円以下ならば、子夫婦と住民票を別々にする「世帯分離」を行い、母親を1人世帯にする。それだけで介護保険料の支払額が年間5万7600円から、ほぼ半額の3万円に減る(東京都杉並区で65歳以上のケース)。同区議で、『「世帯分離」で家計を守る』などの著書がある太田哲二氏はこう話す。

「ほかにも高額介護費の上限額や、高額療養費の自己負担分の限度額を引き下げるなどで、『世帯分離』が威力を発揮します。一つ屋根の下に住んでいてもできるので、ぜひ実践してほしい。これまで銀行口座の天引きなどで社会保障費や、税金を余分に払ってきた“隠れ増税”をいかに取り戻すかが肝心です」

 このほかにも節約術を掲げたので参考にしてほしい。

 5千万件に上る“消えた年金記録”が発覚したのは07年のこと。当時の第1次安倍内閣で首相は「最後の一人に至るまですべてお支払いする」などと、国会答弁で大見えを切ったものだ。だが、その説明責任はいまだ果たしていない。

 国民は賢くならなければ、騙されるばかりだ。(本誌・亀井洋志、西岡千史、大塚淳史)

<下流老人にならないための15の方策>
■控除
(1)障害者手帳をもらう
認知症や糖尿病も、障害者控除の対象。障害者手帳が交付されれば、医療費や住民税が減免される
(2)障害者控除を受ける
障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で要介護認定されていれば「障害者に準ずる」と認定されて、障害者控除を受けられる可能性がある。最大5年前にさかのぼって控除を受けることも可能
(3)扶養控除を増やす
収入の低い70歳以上の家族がいる場合、離れて暮らしていても扶養控除の対象にできる。48万円の控除が受けられる
(4)医療費控除を活用
医療費や薬代のほか、病院までの交通費も対象。治療に関係するものであれば、マッサージなどもOK
(5)介護費用を控除に
介護施設から発行される領収書には、医療費控除の対象となる金額が書かれている。忘れずに医療費控除の申請をしよう

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