「まもなく年金を受給する夫婦のモデルは夫が厚生年金で、妻が国民年金の第3号被保険者です。夫婦の年金だけで最低生活費の月額22万円を確保するのはなかなか困難です。少しでもゆとりのある生活をしていくためには、年金を取りはぐれのないようにいかに多くもらうかが肝要です」

厚生年金は2階建てで、1階が国民年金に該当する「基礎年金部分」、2階が「報酬比例部分」の構造だ。

 現在、厚生年金の受給開始年齢は60歳から65歳へと移行している段階で、特別支給年金として男性は62歳、女性は60歳から「報酬比例部分」を受給できる(男性は1955年4月2日~57年4月1日生まれ。以降、2年ごとに受給開始年齢が1年ずつ引き上げられる)。

「国民年金は62歳から繰り上げ受給すると満額の82%に減額されますが、厚生年金には減額がない。勘違いしてもらわない人も多いが、報酬比例部分はだいたい平均で月額10万円ほどになるので、もらわないと損です」(田中氏)

 ただし、60~64歳で在職中の人は注意が必要。会社の厚生年金に加入したままの状態で、年金の月額と賃金の合計が28万円を超えると、年金の支給額が減らされてしまうからだ。例えば賃金が30万円で年金が10万円の人のケースで試算すると、支給される年金は4万円にまで減る。

「この場合、6万円を国に寄付したのも同然になります。だからといって仕事をやめてはいけません。厚生年金に加入できない身分になればいいのです。今年10月該当者から月に10日だけ勤務するなど、労働時間を正規従業員の2分の1未満の条件に変えると年金を減らされずに済みます」(同)

 年金の受給開始年齢が引き上げられたことで、65歳まで再雇用する会社が増えている。実は満65歳で定年退職するよりも、直前の64歳11カ月で退職したほうがトクなのだ。

 ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏がこう指摘する。

「65歳を過ぎて退職すると、雇用保険は高年齢求職者給付金として最大で50日までしか出ません。しかし、満65歳直前に自己都合で退職すると、勤続年数が20年以上なら基本手当として150日まで出るからです」

 長尾氏の試算によれば、再雇用後の給料が月額35万円の人の場合、雇用保険の基本手当の日額は5249円。150日分ならば約79万円だ。同じ条件で満65歳で退職した人は50日分だから約26万円。50万円以上も多く受け取れるのだ。もちろん、年金とのダブル受給もできるという。

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