そんなとき、家族にはいつも「明日から番組には出ない。でも、生活のことは心配しなくていいから」と告げ、文筆業で生活をつないで他局からのオファーを待った。そのため在京キー局のすべてでレギュラー番組を経験したが、徐々にテレビでの活躍の場は少なくなっていった。
なぜ、そこまで自らの信念を貫き通せたのか。
妻の玲子さん(70)が言う。
「主人を支えていたのは、『自分こそがお茶の間の代弁者だ』という信念ただ一つでした。理不尽なことが重なるたび、その決意は固まっていったのです」
テレビへの失望が大きくなるにつれ、梨元はインターネットに可能性を求めた。05年、「今後は一方通行でマスに情報を伝える時代から、『個』が発信する時代へ変わる」と、自身の芸能情報サイト「芸能!裏チャンネル」を立ち上げる。
長女の麻里奈さん(36)はこう話す。
「今では、芸能人が自分のブログなどで都合のいい情報だけを流すのが当たり前になりました。父が生きて仕事を続けていたなら、こうした現状とどう向き合ったのかを見届けたかったですね」
七回忌を前にした7月31日、東京都内の寺院で、親族のみの七回忌法要が営まれた。
今年の芸能界は、人気グループの解散危機や不倫騒動、薬物問題、放送文化を築いてきた重鎮の他界などで揺れ続けている。
梨元が叫び続けた「視聴者の期待に応えることが最優先。自主規制は駄目!」という言葉が、風化するどころか、ますます輝きを増しているように思えてならない。
※週刊朝日 2016年8月26日号