週刊朝日 2023年2月24日号より

「いろんな手段を検討した結果、リースバックが最適だと判断しました。新居が完成するまでの約1年は定期借家契約でこのマンションに住める。親たちも、今から孫と暮らせて喜んでいます」

 なんといってもリースバックの最大のメリットは「まとまった資金が得られる」という点にある。

 自宅を担保に融資を受け、自宅に住みながら利子を払い、亡くなった後に自宅を売却して借入金を返済する「リバースモーゲージ」という手法でも資金は作れるが、マンション管理士の廣田さんは「土地の持ち分が少ないマンションは評価額が低くなるため、リバースモーゲージはなかなか難しくなる」という。

 まとまったお金が必要な人にとっては、「それならばリースバックで」とすぐ飛びついてしまいがちだが、紹介したトラブル事例も踏まえて「ぜひとも慎重に考えてほしい」と廣田さんは念を押した。

 国土交通省は昨年6月に「住宅のリースバックに関するガイドブック」を発表している。このガイドブックには「リースバックを利用する際のポイント」として、7項目の注意事項が記されている。前出の佐藤弁護士も「トラブル防止に参考になることが書かれているので、ぜひ目を通してほしい」とおススメしていたので、下の表にまとめてみた。

■リースバックを利用する際の重要なポイント

(1)不動産業者・金融機関など複数の事業者に相談し、自分のライフプランに合った条件・手法を選ぼう

(2)解約時に多額のお金がかかることも。きちんと条件・内容を理解するため、契約を急かす営業トークを鵜呑みにせず、落ち着いて、あとで家族に相談して決める、と伝えよう

(3)住み続ける期間にわたって、毎月賃料を支払うことができるか、一度計算してみよう

(4)提示されている売却価格について、複数の事業者に意見を聞いてみよう

(5)買い戻しは「当然の権利」ではない。「いつまでに」「いくらで」買い戻せる条件なのかなど、契約前に確認しよう

(6)自分が望む期間、本当に住み続けられる契約なのか、更新・再契約の条件など契約書の記載を確認しよう

(7)リースバック期間中に設備が壊れたら、直すのは自分・事業者のどちらか? 自分の好きなように修繕等をしていいのか?など確認しておこう

*国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」から抜粋

「おいしい話」にこそご用心。ぜひ参考にしてほしい。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2023年2月24日号

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