また事例としてはさほど多くはないが、【ケース4】「契約時に高額の“諸費用”を請求された」というトラブルもある。

 小林弁護士は「まれに測量費用・事務手数料・仲介手数料などの名目で高額な費用を請求してくる会社があります。リースバック取引では、売買契約印紙代や抵当権などの登記抹消費用以外、費用がかかることはほとんどありません。売り主が負担すべき費用の明細を確認するようにしましょう」とアドバイスする。

 いずれのトラブルも、契約の際にしっかり内容を確認していれば未然に防げた可能性が高い。

「契約前に専門家や公共機関の窓口などに相談したり、比較検討して信頼できる買い主を選んだりするなど、慎重に判断してほしい」

 最後に小林弁護士はそう強調した。

 ここまでトラブル事例ばかり挙げてきたが、もちろんリースバックの制度を上手に利用した成功例も少なくない。

 埼玉県で暮らす80代の夫婦は年齢とともに生活に不自由を感じ、自分たちの年金収入でも住み続けられる高齢者施設へ入居を予約した。ただし、入居にあたってはまとまった金額を一時金として準備する必要に迫られた。

 夫が言う。

「幸いなことに、施設は現時点では満室で、入居できるのは1~2年後になりそうだったので、その間に資金を作る余裕ができました。初めに検討したのは自宅の売却でしたが、売ってしまうと新たに住まいを探さなければなりません。また自宅を担保にした借り入れだと、施設に入居した後に自宅の処分や管理が大変。子供たちと相談してリースバックを選びました。施設への入居ができるようになるまで、今までどおりの生活ができるので満足しています」

 契約を結ぶ際、この夫婦は銀行や複数の不動産業者に相談した末に決めたという。

■注意点を踏まえトラブルを防ぐ

 都内のマンションで暮らす40代の夫婦はコロナ期間を経て、高齢の両親との同居を決めた。

 千葉県内の両親の家を二世帯住宅に建て替えて住む計画だ。その建て替え費用を捻出するため、自宅をリースバックで売却。実家を建て替えている間は両親と都内のマンションで暮らし、二世帯住宅が完成した暁には両親と40代夫婦、その子供の計5人が新居へ移ることにしている。

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