週刊朝日 2023年2月24日号より

 冒頭で示したような“押し売りまがい”の営業行為は論外として、国民生活センターなどに寄せられるトラブルの多くは佐藤弁護士が指摘するとおり、契約内容の理解が不十分なために起きている。

■「買い戻せる」は口約束のことも

 ここからはより具体的に見ていこう。

【ケース1】「売却後は住み続けられるはずなのに、契約更新時に賃料の大幅値上げを提示され、住み続けられなくなった」というトラブル。

 弁護士・宅地建物取引士で弁護士法人リーガル東京代表の小林幸与さんは「こうしたケースは、リースバック後の賃貸借が定期借家契約の場合です。定期借家契約では、契約更新がないので契約期間を過ぎると再契約できません。再契約するなら賃料の値上げを受け入れろということになり、トラブルの元です。再契約ができる条項付きの定期借家契約か、普通の賃貸契約が望ましいです」という。

【ケース2】「リースバックで売却した住居を買い戻そうとしたが、応じてくれない。買い戻しはできるが売却時よりもはるかに高い価格を要求された」というトラブル。

 小林弁護士は「“あとから買い戻せる”と言われて契約したとしても、それが口約束では買い戻しできない場合があります。買い戻し(再売買)の詳細な条項について、契約書に書面化しなくてはいけません。また買い主が倒産するなどして、物件が競売に出され第三者に落札された場合などは、退去しなければならなくなってしまうこともある。契約前にしっかり確認するべきです」と助言した。

 さらに、小林弁護士が注意すべきだと指摘するのが【ケース3】の「修繕費の負担」をめぐるトラブルだ。

 通常の賃貸借契約では、借り主の故意過失によらない設備の故障や内装の汚れなどは、貸主の負担とされる。

「しかし、リースバック取引の賃貸借契約では、修繕費を借り主負担としているケースが多いのです。売り主家族が売却後も引き続き借り主として居住するので、建物内の設備や内装のチェックが買い主(貸主)にできないという理由からです。建物の修繕費用の負担については、契約前に必ず確認してください」(小林弁護士)

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