自分の住まいを売って現金を得て、売った後も家賃を払いながらその家に住む。そんな「リースバック」に関する情報をCMなどで見る機会も多いだろう。だがトラブルも少なくない。利点を最大限に生かすために、やってはいけないこととは。
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「オレオレ詐欺とかの話は知っていたから、見知らぬ人からかかってくる電話には注意をしていたのですが……」
そう話すのは、埼京線沿線の都内マンションで一人暮らしをする82歳の女性だ。
「ローンはとっくに終わっているとはいえ、年金生活。いざ病気になったらどうしようとか、ずっと不安は抱えていました。そんなときに電話で『このマンションを買いたがっている人がいる。1500万円で売ってほしい』と言われ、話を聞くことにしてしまったんです。何しろ築40年近いおんぼろマンションでしょ。まさかそんな高額で買ってもらえるなんて、リースバックってすごいなと思ったんです」
業者は翌日2人でやってきて、その場で契約を迫った。
女性は「高く売れるなら考えたいとは思っているが、今すぐにとは思っていなかった」と拒否したが、「こんなにいい条件はめったにない。今を逃したら次はない」と相手は引かない。女性が「帰ってくれ」と言っても居座り、なお契約を迫る。やっとのことで彼らが引き揚げたのは6時間ほどの押し問答の末だった。
翌日以降も電話や訪問が続き、「権利だけ買わせてくれれば、大金を手にしたうえで、ここに賃貸で住み続けられるんだから」という説得に負けて契約してしまった。
「その日の夜、よくよく考えてみたら、家賃が高すぎる。翌朝電話で契約を取り消したいと言ったのですが、家賃が高いと言うなら安い物件を紹介すると言うだけで解約してもらえなかった。私が死ぬのが早いか、家賃が払えなくなって出ていかなきゃならないのが早いか、かえって不安は大きくなってしまいました」
悔しそうにこう振り返る女性は、「自分が悪かったのですが」と反省の弁を繰り返した。