畑中:フフフ、私の歌のタイトルをさりげなく織り込んでくださって、ありがとうございます。そう、もっと動いていいし、遊んでいい。はっちゃけたオジサンもいますけど、エッチな気持ちを出すのが苦手な人のほうが多いですよね。もちろん不倫やセクハラはダメですけど、男の人にはスケベ心を健全に発揮してほしいな。

──今の言葉で全オジサンが泣きました。7月21日発売の「SEX PACK」は、「後から前から」の(CDでなく)レコードのほか、ガールズガード(コンドーム)や、ご自身の“恥ずかしい写真”などが入っています。このセットにも、元気が出るというか、「突き抜けるコツ」みたいなものが詰まっている気がします。

畑中:もうね、プロデューサーのヤン富田さんが、思いっきり遊んでくださって。若くはない私が歌い続ける意味も、同世代の男女に「よし、自分も!」と元気を出してもらうところにあるのかな、と。

──いえいえ、今もお若いです。振り返れば、78年にデビューし、2年後にはにっかつロマンポルノに出ていた。その間、最初の結婚離婚があり……。

畑中:自分の歩んできた道ですから、当時のことはぜんぜん隠してはいませんけど、ホント、いろいろありました。事務所の社長に「『カナダから~』が欲しかっただけで、畑中葉子が欲しかったんじゃないんだよ」って言われてショックを受け、恋愛と結婚に逃げ込みました。でも、すぐダメになって離婚したら、「脱ぐなら面倒見てやる」と言われました。1作の約束だったのにヒットしたもんだから、にっかつの偉い人たちに土下座されて結局4作……。まあ、いろいろあったおかげで、今でも多くの人に「後から前から」や私のことを覚えてもらってるんですけどね。それに、嫌なことって忘れるんですよ。

──強い。なんて強い。その後、25年前に現在のご主人と再婚して、娘さんと息子さんに恵まれました。復帰したいというお気持ちはいつごろから?

畑中:子ども2人が成長した7~8年前から考えてました。子育て中には、子どもの不登校や親の介護があって、私自身が精神的に参っていた時期もありました。

──今の歌声がさらに色っぽくて味わい深いのは、波乱の人生経験というスパイスが利いているからなんですね。

畑中:そ、そうかな。ものは言いようですね。子どもたちも「イケてんじゃない」「新しいCDが出るの。畑中葉子、来てるねー」と応援してくれるのはすごく嬉しいです。やりたいことを好きにやれて、今がいちばん幸せですね。

──私たちも、戻ってきてもらえて、とても幸せです! 日本のオジサンにとって、いや日本にとって、畑中さんが歌う「後から前から」は、明日への希望を抱かせてくれる宝物です。

畑中:みなさんの求めるところをお返しするのは大切ですが、歌い続けていくためにはそれだけじゃダメだと思ってます。懐かしさの部分はしっかり残しつつ、変化していけたら、と。

──楽しみです! 我々も「後から前から」な生き方を見習って、もっともっとがんばります!

(※)1981年発表のシングル曲のタイトル
週刊朝日  2016年7月29日号