
はたなか・ようこ/東京・八丈島出身。1978年1月にデビュー。同年のNHK紅白歌合戦に出場した。主演したにっかつ映画も大ヒット。子育てのために休業し、2010年に芸能活動を再開(撮影/今村拓馬)


1978(昭和53)年に平尾昌晃とのデュエット「カナダからの手紙」でデビューした畑中葉子さん。子育てなどで芸能界から遠ざかっていたが、数年前に活動を再開。この5月には、大人のお色気たっぷりの昭和歌謡10曲を収めた新譜「GET BACK YOKO!!」をリリースした。「♪後(うしろ)から前からどうぞ いつでも抱きしめていいの」というフレーズが印象的なヒット曲「後から前から」の新録音も収録されている。コラムニストの石原壮一郎氏がリリースの真意を聞いた。
──「GET~」では、「伊勢佐木町ブルース」「絹の靴下」といった魅惑の昭和歌謡を色気たっぷりに歌い上げています。それにしても、「後から前から」というタイトルは、つくづく絶妙ですね。
畑中:意味深だけど、シャレが利いていて、あれこれアレンジしやすい。歌手として活動を再開するときにツイッター(@hatanaka_yoko)を始めたんですけど、「おなかをこわして上から下から」とか、みんなが遊んでくれてるんですね。かわいがってもらっているのが嬉しくて、私も2年前、前面に「後から」、背中に「前から」って大きく書いたTシャツを作っちゃいました。
──最近は草食系男子と言われる若い男性だけでなく、オジサン世代もなんだか元気がありません。「後から前から」の“復活”で、しょぼくれている男たちも奮い立ちますよ。
畑中:アハハ、そう言ってもらえると嬉しいですね。若いアーティストが歌ってくれたり、カラオケでも人気があったり、本当に幸せな曲だと思います。36年前に歌っていたときは、歌詞の意味はわかっていたけど、深いニュアンスまでは考えてなかったかな。声や見た目を「色っぽい」と評されるのがすごく嫌でした。
──しまった。新録音の「後から前から」では、声やリズムがさらに色っぽくなりましたね、と言おうとしていました(笑)。
畑中:いえいえ、今はとっても光栄です。昔は「脱いだからそう言ってるだけでしょ」って反発してました。でも、ちょっと前に20歳ぐらいの自分が歌っている映像を見たら、「ああ、これは色っぽいって言われるかも」と思いました。新録音版は、テンポが速めなんです。一生懸命ついていこうとしている必死さが、色っぽさにつながってるのかもしれません。
──あの歌を聴くと、既成概念に縛られず、縦横無尽に自由に生きていいんだよと、応援してもらっている気になります。
畑中:えーっ、そんなふうに言ってもらったのは初めてです。なるほどね……。
──オジサンたちはなかなか後ろに前に変化して生きられないし、誰も「どうぞ」と言ってくれません。
畑中:多くのオジサンは、働かされ続けて疲れているかもしれない。肩書とか「男だからどうだ」みたいなことにこだわって、自分で壁を作っているように感じることもあります。もっと楽しく、もっと自由に生きていいと思いますよ。
──女性との接し方にしても「もっと動いて」(※)いいですよね。