160/100mmHg未満の高血圧で糖尿病などの合併症がなければ、多くのケースで最初に生活習慣修正の指導を受け、3カ月たって効果がなければ薬物療法を併用することになる。

 生活習慣の修正では、なによりもまず減塩の実践が重要だ。過剰な塩分摂取で増えた血中のナトリウム量の濃度を下げるために、体液が血管内に移動して血液量が増加し、その結果、血圧が上がるからだ。現在、日本人の男性の塩分平均摂取量が1日10.9グラム、女性は9.2グラムだが、高血圧のある人では男女とも1日6グラム未満が推奨されている。塩分摂取量が多いと降圧効果が弱くなる治療薬(ARBなど)もあるので、減塩は不可欠だ。

 しかし、急激な減塩食の実践は食事のおいしさ、楽しさをうばい、長続きしない。そこでまず、自分の現在の塩分摂取量をチェックすることがすすめられる。そして、できるところから少しずつ塩分を減らしていく。

「うどんやラーメンのつゆを飲み干すことをやめる、弁当の梅干しを食べないようにするなど、できることから実践しましょう」(同)

 外食の場合はメニューに塩分含有量を表示しているところもあるので、まず目を通したい。

 加工食品にも気をつけたい。日本高血圧学会や関連学会が厚生労働省などへ働きかけ、2015年4月から加工食品の成分表示を、ナトリウム量から食塩相当量に変えるよう義務付けられた。5年間は猶予期間があるためナトリウム表示のものもあるが、ナトリウム量を2.54倍したものが食塩相当量になるので目安にする。また、減塩食品が日本高血圧学会のホームページに紹介されているのでそれも参考にしよう。1カ月もすれば薄味に慣れておいしく感じられるようになる。上手に「慣れ」を利用するのが続けられるコツだ。

「高血圧の改善というと、減塩、減量とお題目のように唱えながら実践できない人も多いのですが、健康寿命を延ばすためにも、40代以上の人は今日から、まずできるところから減塩生活を始めてください」(同)

週刊朝日 2016年3月18日号より抜粋