私「落語家はお正月に寄席の前座さんやお囃子さんにお年玉を渡すんです。我が落語協会だけで前座が30人、お囃子さんが20人、その他にも落語芸術協会、立川流……他団体の前座さんにも『あけましておめでとうございます!』の一声を掛けられたら払わなきゃ……(泣)」
税「いけないのですか?」
私「払わない人もいます」
税「では経費には……」
私「払わないと何を言われるか!! あいつらどこでも吹きまくりますよっ!! シミッタレだのなんのと!! 働きも悪くなるし、支障だらけです!! 現に前座の時の私がそうでしたっ!!」
税「……では一人一人領収書をもらうわけには」
私「そんなこと言ったらどんな顔するかっ!! 払わないより酷く言うに決まってますっ!!」
税「そうですか……。落語家さんって大変ですね」
そんなやりとりを2時間ほど続け、落語家の苦悩を訴えた。
「では額の信頼性を確認するために、○○区内の落語家さんの経費の平均値をとってみます。お時間をください」
と言って、その日はお開きに。
数日後、税務署からの返答は、
「落語家の申告している額がバラバラすぎて、平均をとったところでそれが『平均値』とは言い難く参考にならない」
同区内に住む同業者の顔がアタマに浮かんだ。みんな、どうやって申告しているんだろう。
後日、某先輩にこの話をすると「あー、俺も何年か前に同じ話を税務署でしたわ」とのこと。
税務署内で「落語家の経費問題」について引き継ぎしてもらいたいものだ。
※週刊朝日 2016年3月11日号