モデルの知花(ちばな)くららさんが、「朝日歌壇」の選者である永田和宏先生に短歌を詠む秘訣を聞く本誌連載『知花くららの「教えて!永田先生」。今回は日常で歌をうまく詠む比喩のポイントを聞いた。
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永田:さて、今回の題は雪(自由題も可)でしたが、くららさん、選んでみてどうでした?
知花:「人生の集大成に」と書いていらした方もいて、このコーナー、責任が重いぞ!と身を引き締めました。選ぶのは難しいなと思いつつ、「キムチのかめの著(しる)きあけがた」など、具体的な言葉が出てくると心が引かれました。
永田:おお。私も選びましたよ。どこが良かった?
知花:「キムチのかめ」という表現からキムチの香りと寒い冬のソウルの情景が思い浮かんで。薄く積もった雪から、カメラのフォーカスをだんだん「キムチのかめ」に合わせていく感じがして。
永田:そうだね。それが、日常を詠む際のポイントだね。最初はボヤンと全体が見えている。でも全体だけを見ていると歌にならない。どこか一点に焦点が絞られないと駄目なんですね。
「深夜二時 雪まだやまぬ道に降り重く冷たい往診鞄」は、車かタクシーから雪が降っている場所に降りたとき、それまで気付かなかった往診鞄の重さと冷たさに気が付いた。車内から外に出て「重く冷たい往診鞄」に気付いた所がいい。