映画の中の西野さんは、とことんタフで、いつも堂々としていて、その佇まいはしなやかで美しい。舞台に出る直前までリラックスしていられる強心臓の持ち主で、今までの人生で一度も「アカン! もうダメだ!」と思ったことはないという。

「パワフルなところは母譲りです。母も仕事を続けながら3人の子供を育てたので、私も、キャリアと子育てを両立させるのは当然だと思っていました。ただ、母は芸術の世界のことはわからない。だから妊娠しているとわかってから、何度か衝突はしました。私は、子供ができたからといってバレエをやめるつもりはまったくなかったし、むしろチャレンジしがいのある作品でカムバックしたかった。実際、母親になった経験が、私の踊りにそれまでとは別の彩りや深みを添えてくれたことを実感しています。体力的には30歳がベストだったけれど、35歳の今も、新たなベストの時期だと思っています」

 ノルウェー国立バレエ団の団員は、国家公務員。ダンサーの定年は、41歳と若い。でも、彼女は「長く踊ることがすべてのダンサーにとって良いこととは思わない。ベストな状態を保てないのであれば、私はすぐにも辞める覚悟でいます」と明言した。

「ノルウェーでは、男性の育休も定着しているし、教育や福祉、社会貢献など、いろんな立場の人が、それぞれのキャリアに応じて社会と関われるシステムが確立している。父は、ノルウェーに来るたびに『良い国に住んでいるなぁ』と言います。『俺も育休を取りたかった』って(笑)」

週刊朝日 2016年2月12日号