塩川先生は小泉内閣の重しであり、小泉の精神安定剤と言われたのも、むべなるかなの感があります。
あるとき、(国会で)野党質問者が、塩川財務大臣の官房長官時代にこういうことがあった、と発言していた新聞記事をもとに「問題発言だ」と追及してきました。私はそのとき内心「まずいことになったな。これは大きな問題になるのではないか」と心配していました。
しかし、答弁に立った塩川財務大臣はあっけらかんと「忘れました」と一言。一瞬、与野党議員ともにあっけにとられ、それが爆笑に変わり、なんとなく終わってしまいました。
これも文部大臣、運輸大臣、官房長官の豊富な閣僚経験を経てきた貫禄と、だれからも親しまれていた塩川先生の人柄、人徳の賜(たまもの)だと思いました。この答弁は名(迷)答弁というか珍答弁というか、国会答弁史に残るのではないかと思っています。
「塩爺」と呼ばれ、「癒やし系大臣」と親しまれた塩川先生のありし日をしのび、心よりご冥福をお祈り申し上げ、お別れの言葉といたします。塩川先生、長い間、ありがとうございました。さよなら。
※週刊朝日 2015年12月18日号