すき焼きを作ると、「砂糖が足りない!」、次のときに濃くすると「甘すぎる!」。どっちよ。
最後の差し入れは、紙のように薄いローストビーフ3枚と、私が揚げたとうもろこしの天ぷらでした。ローストビーフは食べたけど、天ぷらは「まずい!」と言うなりウエ~ッと口から出して、「次はステーキがいいな」とぽろり。じゃあ来週は、フィレのステーキにしましょうかなんて言っていたら、翌日眠るように亡くなりました。
“最後の晩餐”での言葉は「まずい!」だったわけですが、逆にいえばぎりぎりまで食べることへの執着を持っていたわけで、父らしいと思います。体は衰えても欲はつきず……。
なんていろいろ話していますが、父が昔から「書かず、読まず、とらず」と言っていた朝日新聞系の雑誌に遺影とともに載せて頂きありがたいやら申し訳ないやら。でも「あれだけ言っておいたのになぜわからんか!」と化けて出そう(笑)。
※週刊朝日 2015年12月18日号