今年8月に94歳で亡くなった作家の阿川弘之さん。長女で作家・エッセイストの阿川佐和子さんは、最後に差し入れをした時のことをこういう。
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父が亡くなって早4カ月。父親が死ぬと後からじわじわくるものだよといろいろな人に言われましたが、まだじわじわとこないのですよ。私、親不孝な娘でしょうか。
家族の主催ではないけれど、生前父がしなくてよいと言っていたお別れ会を、先日帝国ホテルで開きました。そのお別れ会の食事は見栄えのいいフレンチなどではなく、父の好物のそば、すし、うなぎ丼などを用意したんです。実は余るかなと思っていたんですが、皆さんに召し上がっていただきました(来ていただいた方、あっという間になくなってすみません)。
父は最後の3年間、病院に入っていたのですが、私は仕事の合間に週1回くらいで、父の好きそうな食事を病室に持っていきました。グルメでないけど食い意地が張っている人で、唯一の楽しみは食べることでしたので。その時間を私も大事にしていた。
でも何しろ文句が多いんです。