詩人、エッセイストの佐々木桂さんが、日本津々浦々に残る田園風景とその米を紹介する本誌連載「美し国、旨し米」。今回は、米を削らない日本酒について取り上げる。
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お米を削る割合が多いほどいい日本酒ができるというのが定説だった。だが、その説に反旗を翻す酒が出て来た。“低精白酒”という日本酒がそれだ。
日本酒には純米吟醸、吟醸、本醸造などの種類があり、それは醸造アルコール添加の有無や、米をどれだけ削るか(精米歩合)で決まる。例えば本醸造の精米歩合は70%以下、つまり30%以上削ったものだ。純米吟醸、吟醸は60%以下となる。
低精白酒の多くは、精米歩合80%前後。中には90%のものもある。例えば「妙の華きもと山田錦90%純米無濾過生あらばしり原酒」は90%、「新政92%純米なまざけ」は92%。食用米の精米がだいたい90%程度なので、食用米と酒米の違いはあるが、食べる白米と同じ状態の米で造っている酒とも言える。
「米独特の個性ある旨みが際立つ」と、日本酒好きの間で人気になりつつある。吟醸派の日本酒好きも、一度試してほしい。
※週刊朝日 2015年12月11日号