医師白澤卓二しらさわ・たくじ/1958年、神奈川県生まれ。82年、千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。90年、同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て、2007~15年、順天堂大学大学院加齢制御医学講座教授。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。『100歳までボケない101の方法』など著書多数(撮影/写真部・大嶋千尋)
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医師
白澤卓二

しらさわ・たくじ/1958年、神奈川県生まれ。82年、千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。90年、同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て、2007~15年、順天堂大学大学院加齢制御医学講座教授。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。『100歳までボケない101の方法』など著書多数(撮影/写真部・大嶋千尋)
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『100歳までボケない101の方法』の著者でアンチエイジングや長寿研究で知られる白澤卓二さん。林真理子さんとの対談では、アルツハイマー病は想像以上に早く始まっているという。

*  *  *

林:長寿になったのはいいことですが、最近は右向いても左向いても「親がボケた」という話ばっかりで。これから団塊の世代が老後を迎えるにあたって、いかにこの人たちをボケさせないかというのは、国家的な問題ですよね。

白澤:そうなんですけど、実は認知症の6割を占めるといわれるアルツハイマー病は、45歳から50歳の間にはすでに脳の中で始まってるんです。

林:えっ、そんなに早く。じゃあ、60代の私なんて……。

白澤:タイムマシンで15年くらい戻らないと。

林:でもこのあいだ私、人間ドックで診てもらいましたが、まったく異常なかったですよ。

白澤:そういうのは後にならないとわからないんです。

林:先生、おどかさないでくださいよ(笑)。

白澤:アルツハイマー病の最大の発症要因は年なんです。

林:年齢ですか。

白澤:そう。20歳、30歳でアルツハイマー病になる人はめったにいない。遺伝性の若年性アルツハイマー病でも、発症するのは40~50歳くらいからなんです。だからこの時間軸を遅らせることができればいい。たとえば50歳で始まって75歳で症状が出るのが一般的だとすれば、その速度を半分にできれば、発症を100歳まで遅らせることができる。100歳になれば違う病気で死ぬ確率が高いから、アルツハイマー病はほとんど気にならない。

林:それでアンチエイジングなんですね。アンチエイジングというと女性の美容のことと捉えがちですが、先生がおっしゃるのは脳のアンチエイジング。

白澤:そうです。100歳で元気な人を調べていくと、まさしくアンチエイジングしてる人なんです。肌やスタイルのために食事など内側からのケアを続けていれば、意識せずとも脳もアンチエイジングされてしまう。

林:うちの母はいま100歳ですが……。

白澤:お母さま、どうですか。まだそんなにはボケてないですよね。

林:そんなには。でも誰が生きてるのか死んでるのかわからなくなってきちゃいました。

白澤:100歳でそのくらいということは、お母さまはふつうの人の半分ぐらいのスピードで変化が進んでいるんでしょうね。お父さまはいかがでしたか。

林:父は92歳で亡くなるまで、頭はしっかりしていましたね。

白澤:林さん、それはいい情報です。脳内の老化に関与する化学反応の速度は遺伝子によってコントロールされてますから。

週刊朝日 2015年12月11日号より抜粋