認知症の母親、病気で手術を目前に控えた父親を乗せたまま、埼玉県の利根川に車ごとダイブした47歳の女性が殺人容疑で逮捕された。事件の直前、女性は生活保護を申請し、受理されていたにもかかわらず、なぜ、両親と無理心中を図ったのか。現場を歩き、徹底ルポした。
群馬県在住の岸伝二郎さん(78)は11月22日、趣味の鴨猟をするため、利根川に出かけ、事件に遭遇した。
「何だろうと思って近づいたら、白髪で白い服を着た女の人が横を向いて川に浮かんでいた。たまげて、すぐに110番した」
遺体で発見されたのは、現場から7キロほど先に住む埼玉県深谷市の藤田ヨキさん(81)だった。
そのそばで、藤田さんの三女(47)が座り込んでいるのを見つけた。低体温症ですぐに病院に運ばれたが、命に別条はなかった。
「せめて、娘さんの命だけでも助かってよかった」(岸さん)
その後、300メートル上流で三女の父親、藤田慶秀さん(74)の遺体も発見された。
埼玉県警は死亡した夫妻の三女、波方敦子容疑者を母親に対する殺人、父親への自殺幇助の疑いで逮捕。
深谷警察署によると、波方容疑者は11月22日未明、自分が運転する軽自動車に両親を乗せ、利根川に車ごと突っ込んだという。
「川の中から見つかった車のドアは全て閉まっていて、運転席の窓だけが開いていました。3人乗ったまま沈んでしまおうとしたようですが、できなかったようです」(捜査関係者)
波方容疑者は市役所を訪れ、17日には生活保護の申請用紙を持って帰ったという。一家は3DKで家賃3万3千円のアパートに住んでいた。大家はこう話す。