介護予防事業にも積極的だ。運動や栄養改善、認知症予防や口腔ケアまで、バラエティーに富んだ無料のプログラムを23項目そろえた。利用者たちは、介護保険の“卒業”後もほぼ同じ内容のサービスを利用できる。介護保険では1割負担だったのが「卒業」後は無料になるため、「ただになる」のを励みに高齢者に頑張ってもらおうという仕組みでもある。
さらに市役所で隔週、和光市コミュニティケア会議(地域ケア会議)を開いている。今年度から国が全ての自治体に義務づけたのに先駆けて、同市は01年に始めた。市内すべての地域包括支援センターの職員、保健師、看護師、理学療法士、管理栄養士らが一堂に会し、各高齢者のケア計画の内容を議論し、見直す。
『埼玉・和光市の高齢者が介護保険を“卒業”できる理由』(メディカ出版)の著者で介護ライターの宮下公美子さんはこう話す。
「和光市は、『日常生活圏域ニーズ調査』を実施し、未回答の人を個別に職員やサポーターが訪問しています。支援が必要な人を見逃さないように努力してきたことが大きいと思います」
今年4月の介護保険制度の改正で、要支援2と1向けの介護予防事業のうち、予防通所介護(デイサービス)と予防訪問介護(ホームヘルプ)は、国から市区町村の「地域支援事業」への移管が決まった。18年3月末までに終了する。介護予防に積極的かどうか、自治体によってサービス格差が問題となり始めている。
和光市の東内部長が指摘するとおり、介護保険は利用者が増えると、自治体の財政を圧迫する。要介護度が軽くなる、または進まないようにして、自立して生活することは、高齢者本人にとってだけでなく、コストを抑えたい自治体にとってもメリットになる。
※週刊朝日 2015年11月13日号より抜粋