
伊藤淳史
いとう・あつし/1983年、千葉県出身。97年「鉄塔武蔵野線」で映画初主演。映画「海猿」(2004年)に出演。ドラマ「電車男」(05年)でブレーク。「踊る大捜査線」シリーズの劇場版第3弾「THE MOVIE 3 ヤツらを開放せよ!」(10年)、最終章「THE FINAL 新たなる希望」(12年)、「チーム・バチスタ」シリーズの劇場版「ケルベロスの肖像」(14年)、映画「ビリギャル」(15年)などに出演。映画「ボクは坊さん。」は全国公開中。ドラマ「無痛~診える眼~」は毎週水曜夜10時からフジテレビ系で放送中(撮影/写真部・加藤夏子、スタイリング/藤井牧子、ヘアメイク/大橋覚)
現在公開されている映画「ボクは坊さん。」の主演・伊藤淳史さんは、初めてのお坊さん役で、戸惑いがあったそう。作家・林真理子さんとの対談で、撮影の裏舞台を明かした。
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林:いま、お坊さんの漫画も連続ドラマもありますし、お坊さんの日常ってこんなに人気があるものなんですね。
伊藤:生きることとか死ぬこととか、そういうことを考えるタイミングなのかもしれません。このお話をいただいたときに、そう感じました。
林:不器用だけど誠実で、試行錯誤しながら何かを掴んでいくこの役、伊藤さんにピッタリですよね。こういうお坊さんだったら、死んだあとお経をあげてほしいと思いましたよ。お経、練習されたんですか。
伊藤:はい。原作者の白川密成(みっせい)さんが読んだお経を録音して家で練習して、クランクインの2日前には密成さんが住職をされている栄福寺(愛媛県今治市)に行ってお経を聞いていただきました。でも、ぜんぜんダメだと言われて。
林:あらま。お経って独特の節があるんですよね。
伊藤:そうなんです。「力を入れすぎている。無になった気持ちで淡々と読んでください」と言われました。役に対して気持ちを込めるという、自分が今までやってきたお芝居と真逆な感じがして、戸惑いましたね。密成さんには撮影現場に来ていただいたんですが、お芝居的にはOKでも、「お経がイマイチだったのでもう一回」とか、ありました。
林:今治でロケをしたんですよね。
伊藤:東京近郊でも撮れたかもしれませんが、あえて今治に行って撮影したんです。最初に出てくる本屋さんも、実際に密成さんが住職になる前に働いてたところなんですよ。
林:今治にあんなに大きな本屋さんがあるなんて、感動ですよ。最近、本屋さんがない街がいっぱいあるから。
伊藤:3週間いたんですが、リアルな空気を感じながら、余計な役づくりをする必要もなくできたので、ありがたかったですね。こんなふうにお芝居ができたのは、久しぶりでした。
林:高野山にも行って、特別に中に入れていただいたんですってね。
伊藤:2日間行って、撮影自体は1日でした。本当のいちばん奥までは入れなかったんですけど、奥の院まで撮影させていただいたのは、映画では初めてみたいです。
※週刊朝日 2015年11月6日号より抜粋