一人っ子どうしが結婚して25年。人気芸人である夫・太田光、所属事務所の社長として支える妻・太田光代。2013年にお互いに多忙を極めるなか、双方の母の介護問題が突然訪れた。「二人同時」という“想定外”の事態。大きな悩みの末、光代さんの実母を自宅に引き取ったが、夫の母は高齢者ホームに入居することになった。光代さんは「子どもの家に住むのが最良の選択なのか」と疑問を呈する。
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あとになってはっきりしたのですが、この選択は大正解でした。入居してほどなく、義母はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症したのです。長年の喫煙が原因の病気で、呼吸器に障害が出ます。義母は常に酸素ボンベを携帯しなくてはならず、睡眠時も専用のボンベが必要になりました。わが家に引き取っていたら、この治療は難しいでしょう。入居してよかったと心から思いました。そして何より、義母がホームで友達をつくり、充実して過ごしていることが私たちの救いでした。
「親は子どもが引き取るのがベスト。それができないときに、苦肉の策としてホームに入居させる」というイメージがあります。私にもその思い込みがあり、葛藤しました。
でも、本当にそう? 子が親を引き取れば、親の老後は幸せなの?
実母がわが家に暮らし始めて2年。母が私たちと顔を合わせるのは朝だけで、一日ほぼ一人で過ごします。家の近所に知り合いはなく、一人で出歩くこともできません。毎日ソファにちんまりと座り、テレビを見て過ごすのです。こんなに単調でいいのかと心配になることもありますが、仕事を辞めて母に付き添うこともできません。「母も義母のように、高齢者ホームに入ったほうが幸せだったかもしれない」と思うこともあります。
私はいま51歳。同世代より少し早く介護を始め、「ひと世代上とは状況が違う」と実感しています。
私たち世代は兄弟姉妹の数も少なく、一人っ子夫婦も一般的。男女雇用機会均等法世代だから、女性も責任ある仕事につき、介護要員になりにくい。結婚してない人、子どものいない人も増えました。親を看るには、圧倒的に人手が足りないのです。だからこそ、昔の価値観や、狭い視野で介護を考えてはいけないと思います。無理して親を引き取っても、親だって息が詰まるかも。
選択肢をいろいろ用意して、親がまだ元気なうちに相談することをおすすめします。「その時」は突然きますが、「その時」には聞きにくいこともあるのです。親の定年や、どちらかの親が亡くなったときなどのタイミングで、「体が不自由になったらどうしたい?」と話し合うのがいいと思います。
介護は、2度あります。1度目は自分の親の介護。2度目は、自分が介護される立場になるとき。親の介護は、自分がどう介護されたいかを考えるきっかけにもなりますよね。
私も考えました。私たち夫婦には子どもがいないので、ある程度の年齢になったら身辺を整理し、夫と二人でホームに入居しようと。そして夫が要介護になったら、専門家にお任せするんです。
だってイヤですよ。夫のオムツを替えるのは。私は、24歳のときからずーっと太田光の面倒を見てきたんです。老後はもう解放していただきたいですね(笑)。
※週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋