現在、食事の支度や掃除などの家事支援が必要な人に週5日、訪問介護を行っている。利用者の要介護度は要支援~要介護1で、87歳から98歳の男女4人。
千福さんが訪問介護員(ホームヘルパー)になったのは73歳になってから。ホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修修了者)を取得し、76歳で難関の介護福祉士、80歳で介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を次々と取得した。
ケアマネジャーの試験は合格率19.2%(14年度)と狭き門。千福さんは昨年受験し、一度で合格したことが話題を呼んだ。ヘルパーを目指したのは、夫、庄一さん(享年72)が脳内出血で倒れてから。要介護状態になり、1年半、訪問介護を利用しながら、自身も老老介護を経験したことがきっかけ。
「介護の知識がなく、脳内出血で倒れた夫に十分な介護ができませんでした。担当してくれたヘルパーさんやケアマネさんにはホンマよくしてもらった」(千福さん)
24歳で結婚後、板金業を営む夫を支え、3人の子育てに奔走。60歳を過ぎてからは子どもが経営する薬局を手伝った。2003年、夫が他界し、06年、店をたたんだ。家族のために尽くした人生。やることがなくなり、心にぽっかりと穴が開いたとき、「自分に何かできることはないか」と考え、ホームヘルパーになる決意をした。
シニアは介護現場で貴重な戦力になると言うのは、東洋大学ライフデザイン学部の早坂聡久准教授。
「介護士不足は深刻です。人の命を預かる仕事なので、誰でもいいというわけではありませんが、軽度者向けの食事の支度や世話、洗濯や掃除などの家事支援は、年配の方のほうがニーズがわかるので適していると思います」
事業所の中でワークシェアリングをすれば、戦力になるという。実際に、介護現場で働くシニアは年々増えている。14年、公益財団法人介護労働安定センターが全国の介護事業所に実施したアンケートによると、60歳以上のホームヘルパーは34.3%、5年前に比べて9.8%アップした。
※週刊朝日 2015年9月18日号より抜粋