「先日、うちの役員クラスが、『再稼働を急いでほしい』と政府筋から言われたと聞いた。口永良部島など噴火の影響で川内がスムーズにいかなくなる可能性があり、うちが一番最初にやれれば、大手柄になる」
だが、伊方、川内原発ともに巨大地震のリスクが潜んでいる。二つの原発の近くを日本最大の断層、中央構造線が通っているためだ。冒頭の小説『日本沈没』は、この中央構造線が千切れて西日本が水没するストーリーだが、地震活動が活発化する中で再稼働した原発を巨大地震が襲えば大惨事は避けられない。放射性物質が放出されれば、風向きによっては首都圏にまで達することになる。
建築研究所特別客員研究員の都司嘉宣氏が解説する。
「地震学者として最も動かしてほしくないのは、東海地震の想定震源域の中心にあり、津波にも弱い地形に立つ浜岡原発。2番目が伊方原発です。伊方の場合、北にわずか数キロほどの海中に中央構造線が東西に走っています。これまで活動はしていないと思われていましたが、2000年代になり1596年に四国西部から九州東部にかけて中央構造線を震源とするM7.7の巨大地震があったことがわかってきた。そのちょうど真ん中あたりに原発が位置する。中央構造線を震源とする地震が起きれば、伊方原発を10メートルを超える大津波が直撃する恐れがあります」
前回の地震から約400年が経っているため、次の大地震がいつ起きてもおかしくないという。活断層の真上近くに原発があるのにもかかわらず、伊方原発は耐震基準が低すぎると指摘するのは高知大学の岡村眞特任教授(地震地質学)だ。
「伊方原発設計時の耐震基準となる加速度はわずか473ガル。もともと巨大な活断層があると言われてきたのに、四電がそれを受け入れなかったためです。愛媛県知事の要請もあり、再稼働までに1千ガルへ引き上げるようですが、もともと低いレベルの設計を急激に強靱化するのは難しい。そもそも中央構造線で大地震が起きれば1千ガル以上は揺れるでしょう。国が四電に評価を求めた長さ480キロの断層が連動して動いたら、どのくらいの規模の揺れになるのか想像もできない。岩手・宮城内陸地震では4022ガルを記録しました。安全性を確保するなら、原子炉を建て替えるしか手はありません」
(桐島 瞬、今西憲之/本誌・小泉耕平)
※週刊朝日 2015年6月19日号より抜粋