昨年4月の本誌の報道をきっかけに、千葉県がんセンター(千葉市中央区)で、難度の高い保険適用外の腹腔鏡手術で患者の死亡が相次いでいたことが発覚した。犠牲者の数は11人、うち8人を同センターのエースであるA医師が執刀していたことがわかった。
日本肝胆膵外科学会は今年4月、同センターについて、難しい手術を行う「修練施設」の認定を取り消し。同時にA医師とその上司にあたるB医師が持っていた「指導医」の資格も取り消した。医師は、患者が死亡した手術について学会に報告せず、“隠蔽”ととられかねない行動をしていた。ある外科医は憤る。
「A医師は膵臓がんの腹腔鏡手術の第一人者。なのに、失敗した手術は隠し、成功した事例だけ学会で報告していた。許せない」
2人は難度の高い腹腔鏡手術について共同で論文を執筆していた。これにも疑惑がある。
3月に県が発表した事故調査報告書案によると、同センターで膵臓がんの開腹手術をした場合の死亡率(術後30日以内)は0.41%。それが腹腔鏡手術だと約15倍の6.2%に跳ね上がっていた。ところが、2人の共同論文には「短期成績では生存率も含めて腹腔鏡下手術は開腹手術に劣っていなかった」と記された。
「2人が所属している診療科は、他の科に比べて再手術が多かった。患者が手術で死亡しても、それを隠すために、別の死因を書いたこともあったようだ」(同センター関係者)
別の論文では、膵臓がんの腹腔鏡手術の技術が確立すれば「膵臓外科新時代の幕開けになるかもしれない」と書いている。高難度の手術を繰り返して失敗していたのは、膵臓がんの腹腔鏡手術の普及が目的だったことが推察される。