「ベテランの二階総務会長には存在感を示してほしいし、期待します。倒閣うんぬんではなく、やはり、対抗勢力があって初めて健全な政党と言えるのではないでしょうか」

「君子危うきに近寄らず」なのか、橋下氏の劣勢が伝えられた住民投票の投開票日前日、関西入りした安倍首相は大阪を素通りし、二階総務会長の地元、和歌山県に向かった。

 高野山を参拝するため、大阪・南海なんば駅を経由することになり、橋下氏を激励するのではないか、という噂が飛び交ったが、自民党関係者の証言。

「関西入りした安倍さんは世論調査で賛成が反対に10ポイントほど負けていることを気にしていた。追い上げているとわかって、『今、ポイントはどう?』と熱心に聞いていた。だが、安倍さんが橋下さんと会うなんてさすがにありえない。自民党大阪府連が近くで同時間帯に演説をしているのに、橋下さんを応援したら、安倍さんが総スカンを食う」

 一方、高野山で首相を満面の笑みで迎え入れた二階総務会長はそんな噂に強い嫌悪感を示していたという。二階総務会長と近い自民党議員はこう言う。

「二階さんは『うちに来るのに、そんなこと(橋下氏の応援)はダメだ』とはっきり言っていた。当日は、大阪府連に頻繁に電話を入れて出口調査の数字を聞いては、(反対票を伸ばすため)あちこちに指示を飛ばしていましたね」

 二階総務会長は菅官房長官が大阪府連と共産党の共闘を批判した際も、「都構想に協力する気持ちは毛頭ない。私は反対の署名をしている」と大阪府連の支援に力を入れてきた。

 党内の微妙な空気を敏感に察知した安倍首相は高野山参拝後、わざわざ直線距離で70キロ以上も離れた同県白浜町へ車で2時間以上もかけて移動し、宿泊。翌日は二階総務会長の地元などを夕方まで巡り、愛敬を振りまき続けた。

「二階さんは今秋の総裁選での安倍さん支援をすでに表明しているので、遠路移動したのは、そのお礼を伝えつつ、この先も裏切らないでねというご機嫌取りでしょう。谷垣さんはいい人だけど、二階さんはやっぱり怖い。古賀さんと組まれるとやっかいですからね」(自民党幹部)

(本誌取材班=今西憲之/本誌・古田真梨子、牧野めぐみ、一原知之)

週刊朝日 2015年6月5日号より抜粋

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