近年、その効果が見直されたり、さらに東北弁バージョンが話題になるなど注目を浴びる「ラジオ体操」。

 多くの人が実践するラジオ体操第1と第2。「幻」と称される第3が存在していたことはあまり知られていない。ラジオ体操が始まったのは1920年代。戦後わずかの間、中止されていたが、復活を望む声を受け、46年から「新ラジオ体操」としてNHKでの放送が始まった。このとき「いつでも、どこでも、誰でも」できる第1、職場の青・壮年層を対象とする第2、さらに運動機能を高める第3があった。その後に再構成されて第1、第2は現在の形になったが、動きが複雑で激しい第3はお蔵入りとなっていた。

 この第3に注目したのが、龍谷大の安西将也教授(公衆衛生学)だ。YouTubeにアップされていた古いSP盤のレコードの音源と簡単な動作図から復元した。

 構成は全11種類の運動で約3分間。両手をグルグル回して屈伸したり、両脚を開閉してリズムよく跳びはねるなど、ダイナミックで複雑な動きが速いテンポで続く。実際に学生にやらせると、心拍数はダイエットやメタボ予防効果が期待できるほどの数値を示し、運動強度としては理想的な有酸素運動であることが明らかになった。それは脳内の栄養素の分泌を促し、不安感や抑うつ感を改善させるという欧米の複数の論文を裏付ける可能性があることもわかった。

「第3は生活習慣病やうつ病の予防効果が期待できる。大きな驚きでした」(安西教授)

 その第3を市民向けの健康教室で取り入れた自治体が、滋賀県東近江市だ。同じ県内の多賀町、湖南市も今年度から導入している。

「今後は地域住民だけでなく、職場の働く人たちの健康づくりにも活用してもらえたら」と言う安西教授は、教育現場での広まりにも期待を寄せる。

「体育授業の定番といえるラジオ体操ですが、最近は第1すら実施していない学校も多いんです。第1、第2とともに第3が、子どものころから心と体を育むツールとして定着してほしい」

 5月に安西教授監修の『DVD付き 幻のラジオ体操第3』(KADOKAWA)、7月にはCD(日本コロムビア)が発売予定だ。

週刊朝日 2015年5月29日号より抜粋

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