自民党の圧勝で幕を閉じた今回の衆議院総選挙。東大教授(社会経済学)の松原隆一郎氏と放送大教授(政治学)の御厨(みくりや)貴氏の論客2人が本誌恒例「国会通信簿」を行った。
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松原:恒例の通信簿にいきましょうか。まずは自民党から。
御厨:まあ、党首力はAでしょうね。
松原:異論のはさみようがないですね。ただ、経済に関しては、まだまだよくない状態。株価も乱高下を繰り返している。いまの日本経済の問題は、いわゆる金融資産などのストックばかり積み上がって、実体経済で大事なフローのお金が流れない。このフローの部分につなぐ必要があるのですが、それがうまくいっていない。
御厨:選挙では憲法改正も集団的自衛権もほとんど語られていません。だけど、選挙で勝利したことを受けて、アベノミクス以外の政策も「全権委任された」と言いかねません。そこが課題です。
松原:一方の野党は、政権に戻る準備が何もできていなかった。戦後最低の投票率も、国民からすれば、あと4年ぐらいは政権を安定させたいという気持ちの表れではないでしょうか。
御厨:政策の中身よりも、戦略が優れていたということ。そこを評価して、今回は珍しく自民はAに。続いて連立与党の公明党です。
松原:議席は増えたけど、低投票率のおかげ。山口那津男代表に人気やカリスマ性があるかというとそうでもない。街頭での主張は軽減税率ばかりだった。
御厨:自民党の集団的自衛権も含めて危ない政策に歯止めをかけていると主張するけど、必ずしも歯止めがかかっていない。
松原:安倍さんが今後、集団的自衛権や憲法改正に踏み込んだら、公明は重大な決断を迫られる。ついていくのか、連立離脱するのか。
御厨:昔の公明党には竹入義勝とか矢野絢也とか怪物のような委員長がいたけど、今は怖さがなくなったね。
松原:自公は盤石というけど、ひょっとしたらすぐに決戦が来るかもしれない。