NHK朝ドラ『花子とアン』で石炭王・伝助を演じて主役級の人気を集め、大注目の吉田鋼太郎さん。作家の林真理子さんとの対談で、大学時代の演劇初体験を語った。

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吉田:僕の母は去年亡くなったんですが、母に「最近、宝塚(歌劇)を見にいったんだ。宝塚っておもしろいんだよ」という話をしたら、母が「あんた、子どものころ宝塚が大好きで、テレビにかじりついて見てたのよ。一回宝塚に連れていったら、興奮しちゃって、帰り道、飛んだり跳ねたりして大変だったのよ」って言うんです。僕はすっかり忘れてたんですが。

林:宝塚劇場は女性ばかりですから、いま吉田さんが行かれるとすごく目立つんじゃないですか?

吉田:いえ、一度、小栗旬、勝地涼、長塚圭史と4人で見に行ったことがあるんですが……。

林:いい男ばっかりじゃないですか!

吉田:そのときは3列目くらいで見ましたが、お客さん、無反応でしたね。宝塚のファンは、宝塚の方しか見ないんですよね。

林:おもしろいですね。話が戻りますが、吉田さんは高校を卒業して、どこかの劇団に入ろうとは思わなかったんですか。

吉田:そのときはまだ、役者をやろうとは思ってなかったんです。テレビ局に勤めたいとか、マスコミ関係の仕事がしたいとは思っていたんですけど。何しろ頭の悪い学生だったもので、とりあえず大学に行こうと思いまして。

林:でも、上智大学ですよね? すごく偏差値が高かったと思いますけど。

吉田:そうだったんですけど、僕、推薦入学なんですよ。ちょっとズルしてるんです(笑)。

林:学部はどちらですか?

吉田:ドイツ文学科だったんです。シェークスピアが好きだったので英文学科に行きたかったんですけど、学力が足りなかったんです。

林:上智の英文学科は難しいですよね。

吉田:先生に「英文は無理だから、独文に入って、途中で学科を変わればいいじゃないか」と言われまして。それで「シェイクスピア研究会」という英語劇のサークルに入ったんです。

林:上智って演劇が盛んだったんですか。

吉田:いえ、テニスとかスキーとか、そういうのばっかりでした。ただ、高校の英語の先生がそのサークルの出身者だったんです。そこはセミプロみたいなサークルだったので、「芝居やりたいなら行ってみたらどうだ」と言われまして。

林:すぐ主役ですか。

吉田:いや、ぜんぜん。入部したときは「夏の夜の夢」というお芝居の稽古中で、「妖精の役をやってみろ」と言われて……。

林:まあ、可愛い。パックでしたっけ。

吉田:パックの周りにいるその他大勢の妖精です(笑)。とにかく初めての演技体験ですから、何となく漠然とした妖精のイメージで、(両手をヒラヒラさせながら)こういう感じで出ていったんです。そうしたら、「おまえ、照明係に代われ」って(笑)。

週刊朝日  2014年9月26日号