広島市の土砂災害は死者72人に上り、今も行方不明者2人の捜索が続いている(6日現在)。
そんな中、土砂災害前日の8月19日から20日にかけての松井一実市長の対応が問題視され、「人災」との声も出ている。
20日午前1時49分、広島県全域で非常に激しい雨「1時間最大70ミリ」という雨量予測が発表された。だが広島市消防局はファクスで受信したものの、放置。市は午前4時15分になってようやく避難勧告を出した。
さらにやり玉に挙がっているのは、松井市長の行動だ。松井市長が市役所に登庁したのは午前7時15分で、避難勧告が出てから3時間も経過していた。
「寝たり休んだりしていた」と松井市長は釈明したが、住まいがある広島市中区の降雨量は1ミリだった。
「地元経済界との懇親会があり、深酒して寝過ごしたのではないかという噂などが流れ、メディアに問い詰められると、『私が寝たり、起きたりしてはいけない、とマニュアルに書いてはいない』と逆ギレしてました。松井市長の住まいは市役所のすぐ近くです。広島市はおまけに防災担当の課を廃止していた。市民からも松井市長の人災だと言われています」(広島市議)
そんな中、浮上しているのが来年の統一地方選挙で予定される広島市長選に対する「刺客」だ。3年前の選挙では、自民党と公明党の支援をバックに圧勝だった松井市長。しかし、当選後はJリーグのサンフレッチェ広島に対し、「2位でいい」と発言し、批判された上、今回の土砂災害での不手際が響いた。
「松井市長を何とかしろ、地元財界、市民から候補者を出そうという声が大きくなっている。対抗馬としてサンフレッチェ広島の小谷野薫社長を推す声が高い」(地元有力者)
松井市長に土砂災害前夜の行動について取材を申し込むと、こう回答した。
「懇親会で深酒というのはデマだと思います。そうした予定は入っていませんでした」(秘書課)
サンフレッチェ広島広報にも取材すると、
「今のところ、小谷野本人からそのような意思はまったく聞いておりません」
度重なる不手際で、頼みの自公と亀裂が入り、一部の予算案も市議会で否決されたという松井市長。危機を乗り切れるか。
(本誌・上田耕司、古田真梨子、牧野めぐみ/今西憲之、伊藤あゆみ、黒田 朔)
※週刊朝日 2014年9月19日号