認知症の方にどのように接すれば良いのかと悩む人は多いはず。実際に、相談窓口にはどんな悩みが寄せられているのだろうか。2000年の開設以来、のべ5万7千人の介護家族から電話で悩みを聞きいてきた社会福祉法人浴風会(東京都杉並区)の「介護支え合い電話相談」を担当する角田とよ子室長に質問形式で回答してもらった。

Q:50代の母は若年性認知症と診断され、要介護1。一日に何度も職場に電話をかけてくるので会社を辞めざるをえませんでした。24時間365日拘束される生活にもう耐えられません。(30代・女性)

A:母親と二人きりという状況は息が詰まるでしょう。以前のように友達とランチしながらおしゃべりできたらいいなと思うのなら、それを実現するために、介護保険サービスを利用することをお勧めします。ケアマネジャーに相談して母親に合ったデイサービスを見つけて、まずは週に一度、行ってもらうことから始めてはどうでしょう。ショートステイを利用して旅行に出かけてリフレッシュする方法もあります。介護が頭から離れる時間をもてれば、ストレスは軽減されます。介護中でも趣味やスポーツを続けたり、自分へのご褒美をとおいしいものを食べたりして介護を乗り切っている人がたくさんいます。

Q:末娘の私は結婚後も両親と同居で、父を10年前に看取ってからは、認知症の母(90代)をみていますが、きょうだいが協力してくれません。(60代・女性)

A:一人で認知症の人を介護するのは大変。よくなさっていると思います。介護は長丁場ですので、きょうだいがいるなら協力や分担をしてもらえるといいですね。その際、どんなふうに動いてほしいのか、具体的に頼むことがポイントです。例えば、美容院に行ったりゆっくり買い物をしたりして息抜きをしたいと思ったら、「土曜日の午後1時から6時まで家に来て、母と3時のお茶をしてトイレの世話をしてもらえると助かる」などと、時間と内容を明らかにして伝える。すると手伝う側も引き受けやすくなります。それできょうだいから断られたら、介護サービスや見守りボランティアなど地域の支援をお願いしましょう。血縁のない人へ頼むほうがストレスにならない場合もあります。

Q:認知症の父(70代)は一人暮らしで、買い物も通院も自分で車を運転して行きます。この半年で3~4回車をぶつけ、こすり傷もたくさん。どうにかして、運転をやめさせたいのですが。(40代・女性)

A:認知症になると判断力や実行機能が衰えるので、運転は大変危険です。しかし車がないと移動できなかったり、本人の数少ない楽しみだったりする場合もあり、やめさせるのが難しいケースも多いのは確かです。一人暮らしでは家族が運転を代わることもできません。強引にやめさせようとすると本人のプライドが傷つき、けんかになることもあります。そのような場合、医師や警察官の言うことには従うこともあるので、運転の危険性を説明してもらい、免許証の返上につなげてもらうのはどうでしょうか。

Q:認知症の母(80代)の面倒をみるため3年前に会社を辞めました。母は認知症が進み、失禁するようになり、一人で山のような洗濯物を洗っているとむなしさを感じます。(50代・男性)

 

A:認知症の症状が進むと目が離せなくなる上に、洗濯などの家事に追われて心身ともに疲労がたまります。特に男性の介護者によく見受けられるのは、誰にも相談せずに孤立してしまうことです。人の手を借りたいと思ったら、近くの「地域包括支援センター」に相談してください。介護者自身のつらい思いを聞いてほしい時こそ、私たちのような「電話相談」を活用してください。問題解決への糸口が見つかることもあります。

週刊朝日  2014年9月12日号より抜粋

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