ジャーナリストの田原総一朗さんは、岸田文雄首相の原発積極論について言及する。
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<今後10年間のエネルギー安定供給と脱炭素化のために、既存原発の60年超の運転を認めたうえ、次世代原発の開発を進めるなど原発に回帰する一方、償還財源を炭素税などとする20兆円の「GX経済移行債」を呼び水に官民で150兆円を調達し、再生可能エネルギー(再エネ)などで脱炭素を推進する──。>
「FACTA」2月号は、これが<「聞く力」の岸田文雄首相らしい「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」の結論だった。>と書いている。
多くのマスメディアも、これとほぼ同じ報じ方をしている。
2011年3月の東日本大震災以後、歴代首相は原発については慎重、というよりも消極的な発言を続け、岸田首相も総裁選に立候補するときは「原発の建て替えや新増設は想定していない」と表明していた。それが原発積極論に大きく転じたのだ。
立憲民主党、共産党などは岸田首相の大転換を厳しく批判している。立憲の岡田克也幹事長は1月30日の衆院予算委員会で、新しく原発をつくるには何年もかかり、電気代高騰の要因となっているウクライナ危機とは直結しないとして、「時間軸が全然違う。この機に乗じている」と厳しく反発した。
朝日新聞によれば、反発に対して岸田首相は「(日本は)先進国でも最低レベルのエネルギー自給率、世界の中でも高い中東依存度」だとして、理解を求めた。野党が再生可能エネルギーの推進を求めると、「(日本は)山や深い海に囲まれ、再生可能エネルギーの適地が少ない」と述べたようだ。
岸田首相を支持するある自民党幹部は、野党時代をこう話した。
「2010年6月、民主党政権が発表した新成長戦略のなかで、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略を打ち出した。『20年までに50兆円超の環境関連新規市場』や『140万人の環境分野の新規雇用』を高らかにうたっていた」
だが、戦略は頓挫した。10年当時、世界をリードしていた太陽光パネル開発は、京セラとシャープがトップ10から滑り落ち、今や世界の8割を供給するのは中国系企業である。家電や半導体同様に、日本の製造業のコストが高く、国際競争力を失っているのだ。その要因の一つが日本の電気料金の高さである。