自民党の日本経済再生本部がまとめた「日本再生ビジョン」の提言で、「プロ野球16球団構想」が突如飛び出した。球界や野球ファンには実現性や意義を疑問視する声も多いが、ひょっとするとこの構想は、90年の歴史を誇る日本のプロ野球界を変える嚆矢(こうし)になるかもしれない。
16球団構想により、「オーナー会議にメスを入れられる」と期待する声もある。スポーツライターの青島健太氏は言う。
「オーナー会議は各球団の意向や利益が優先されて球界としてのビジョンが乏しい。大リーグのように、全球団が一つになってビジネスを展開できていない」
日米プロ野球の総収益を比較した、興味深いデータがある。1995年の日本野球機構(NPB)と米大リーグの総収益は1千億円台で同程度だった。しかし、大リーグは全球団が一つになった組織を作り、市場開拓に乗り出した。その結果、2010年には日本は1千億円台で横ばいだったのに対し、米国は5千億円以上に拡大した。
球界全体で組織改革に乗り出さないと、日本の野球市場は縮小していく。
「政治の動きがオーナー企業にも変化を促す。16球団構想はその起爆剤になるかもしれない。野球市場が魅力的になれば、球団を持ちたい企業も出てくるはずだ」(青島氏)
野球ライターの京都純典(みやこすみのり)氏は、「セ・リーグの一部球団は営業努力を怠っている」と指摘する。セ・リーグ球団は観客動員が見込めるドル箱の巨人戦が減ってしまうのは困る。そのため、新球団構想に反対するのは、巨人以外のセ・リーグ球団だろうというのだ。
「巨人戟であろうがなかろうが、観客を動員することが球団経営であるはずだ」(京都氏)
ある球団幹部がこんな話をする。
「オーナー会議を巨人の渡邉恒雄会長が牛耳っているというイメージが世間的には強いが、事実上、渡邉さんは球団経営から手を引いている。改革に積極的なパ・リーグと消極的なセ・リーグがあり、巨人は実はパ・リーグに近い。最も保守的なのは中日と阪神だ」
16球団構想が、そんな球界の活性化につながる逆転打になるだろうか。
※週刊朝日 2014年6月13日号より抜粋