「あの政治家と、この社長が同窓生!?」――政治、経済の業界ごとに、有名な出身者が多い、いわば業界の名門高校を探った。日本のベスト&ブライテストの“分布状況”を見てみよう。

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 現職国会議員の出身者が多い高校のランキングに、政治評論家の伊藤惇夫氏は「興味深い結果ですね」と言う。

「議員の卒業大学から、ある程度は想像していましたが、こうして高校名を見ると、改めて小選挙区制と世襲議員の問題について考えさせられます」

 特に1位の慶應義塾(27人)は親も国会議員という世襲議員が半数以上を占めた。石原伸晃環境相・宏高外務政務官の兄弟を筆頭に、石破茂自民党幹事長、河野太郎・同副幹事長、中曽根弘文元外相、福田達夫衆院議員といった名が連なる。高校の所在地は横浜市。ほとんどの議員が自身の選挙区とは無関係だ。

「複数が当選する中選挙区制とは異なり、小選挙区制は基本的に1人です。世襲議員は親の知名度と後援組織を引き継げますから、新人のように地元で自前の後援会を作る必要がない。選挙区の高校に通う必要はないというわけです」

 2位の創価は13人全員が公明党議員。3位からは東京中心に、いわゆる「東大合格者数ランキング」の常連が目立つ結果となった。

 ここで各校の「与党率」を見ると、同じ“エリート校”でも傾向は異なる。慶應(81.5%)や4位の開成(10人中7人、70%)は与党率が高いが、武蔵は与党議員が6人中2人(33.3%)。筑波大附駒場(9人中6人、66.7%)は与党率は高いが、小池晃、笠井亮という共産党の有名議員が出ている。

 ここに各校の個性を見いだせるのか――。伊藤氏は「偶然でしょう」と一蹴しつつ、こう指摘する。

「むしろ首都圏の高校で育った議員が増えていることに注目すべきだと思います。例えば自民党は農協改革に手をつけていますが、昔なら考えられません。新自由主義経済観が国会で強まっていますが、ランキングはその背景を物語っているかもしれません」

 政界とは異なり、多様性を示したのは財界だ。東証の株価指数「TOPIX100」の対象となっている、日本のリーディング・カンパニー100社の社長の出身高校を調べた。

 ランキングとしては麻布(5人)、慶應(3人)、西・岐阜・東海・同志社・灘・修猷館(各2人)の順だが、都市部の私立高校だけでなく、地方の名門高も企業トップが輩出していることがよくわかる。

 大手ヘッドハンティング会社「サーチファーム・ジャパン」の武元康明社長はこれを見て、「普段、目にすることの多い高校が並んでいますね」と言う。

「例えば開成は官僚、灘は医師になる出身者が多く、どうしても財界では数が少なくなる。一方、優れた企業人を生む高校は、基本的に多様な人材を送り出している学校だということが見えてきます」

 それにしても慶應の存在感は抜群だ。政界が1位で財界が2位。『慶應三田会』(アスキー新書)の著書もある宗教学者の島田裕巳氏は、「東大生の変化も影響を与えていると思います」と分析する。

「戦前の東大はエリート養成機関として政財界にも人材が輩出していましたが、よくも悪くも最近の東大生はアカデミックな志向を強めています」

 近年、東大は大学院への進学率が高まり、就職率は決して高くない。そこに慶應が着々と人材を世に送り込んでいるというわけだ。

「もちろん慶應OBの団結力が政財界で力を発揮していることも大きいですが、今が経済の時代だということも見過ごせません。政治も景気回復が最大の課題となると、慶應OBに期待と注目が集まるのは当然なのかもしれませんね」

週刊朝日 2014年5月30日号より抜粋

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