「日本再生」を設立目標に掲げるチームラボ代表猪子寿之氏(37)は、希望の国ニッポンへの可能性を観光ビジネスに見いだしている。
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外国人観光客にとって、日本は言葉を話せなくても気持ち良く楽しめる、世界一の国になる可能性を秘めています。日本は観光ビジネスで、アジア経済の、いや、世界経済の中心に立つことも夢ではないのです。
政府は20年の外国人観光客数2千万人を目指しています。日本に来る外国人観光客が大きく増えれば観光客による消費が増え、経済は活性化するでしょう。
そのためのポイントは、街のデジタル化です。
身近なところでは、地下鉄の案内板。ドンと一枚の図版だけでは、何も展開がありません。けれど、その案内板をデジタル化したらどうでしょう。そこから動画やアニメーションが展開する仕掛けをつくったり、案内板にスマートフォンをかざすと、おススメの観光場所を教えてくれるような仕組みだってつくれます。
このように、言葉がなくても誰もが「感じ取れる」デジタル化した街をつくれば、外国人にとって非常に利便性がよくなるのです。そうした技術は日本ではすでに確立されています。
そもそも、日本はデジタル先進国で、言葉をそんなに話さなくても暮らしていける国でした。ファミリーレストランを見てください。ボタンを押せば店員さんが来てくれます。席にタッチパネルを設置している店も多いですね。その画面の料理や飲み物を押すだけで注文でき、飲食代金もパネルに表示されます。
現在、千葉県のイオンモール幕張新都心など各地で実施している「チームラボ学ぶ!未来の遊園地」では、デジタル化した街を考えるうえで、興味深いイベントを行っています。
たとえば「お絵かき水族館」は、子どもが描いた絵が、映像化されて目の前の水族館で泳ぎだし、触ろうとすると逃げたりします。子どもたちはその魚にエサをあげることもできるんですよ。もちろん、大人だって大はしゃぎです。言葉がなくても楽しめるんです。
こうした試みは、日本中でもっともっとやることができると考えています。日本の歴史や伝統、自然が感じられるアートをデジタルでつくって、街を歩くだけで誰もが感じ取れるようにすればいいんです。成田空港ではいま、岩肌に渦巻く滝を立体的に表現した作品を展示しています。これを見ただけで空港に降り立った外国人の誰もが日本の自然を味わうことができます。
日本語や英語を話せなくても便利で楽しい日本。外国人観光客を増やすのは、日本にとって、そんなに難しいことではありません。
※週刊朝日 2014年5月9・16日号