文筆家の北原みのり氏は本誌連載の「ニッポンスッポンポン」で、女同士が分断されない日本に…と願う気持ちをつづった。
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NHKの朝の情報番組「あさイチ」で、女性の貧困の特集が組まれた(12月11日)。今、シングルマザーの世帯数は約123万、そのうち48%が貧困層と見られている。限界まで働いても、ひと月10万円ほどの生活を強いられる。
シングルマザーを雇用する企業は少なく、就職できても、子供の病気などで早退することに母自身が自責の念を感じ、退職する現実もある。
番組では、風俗で働くシングルマザーを取材していた。時間の融通がきき、保育所を併設している店も少なくなく、彼女たちにとって間口が広く、働きやすい現実があるのだ。
女のリアルを反映した画期的な取材だと思って見ていたが、番組途中で紹介された視聴者からのファックスはあまりに厳しかった。
曰く「安易に結婚し、安易に子供を産んで、安易に離婚したのだから自業自得」「離婚したら生活できないのはわかっていたはず」「夫と死別した人と、自己都合で離婚した人を一緒にしないで」という声が、次々に紹介された。
朝からあまりにも重たいリアルワールドを突きつけられた。女が、こんな風に分断されてしまう現実。そしてシングルマザーへの冷酷な視線。そんな視線の背後には、「私は我慢している」という主婦の矜恃があるのだろう。子供のため、お金のため、と過酷な結婚生活を耐えている大多数の女の声があるのだろう。
風俗で働くと性感染症や心が壊れるリスクがある、というゲストの声に、コメンテイターの社会学者の青山薫さんが仰っていたことが印象的だった。「最大のリスクは助けを求められなくなること」。
大阪で2児を放置し死なせた20代の女性の事件を思い出す。風俗で働く女に向ける偏見が、女を追い詰めていくのだ。
セックスワーカー以外に選べない過酷。または“そうならないため”に、つらすぎる結婚を持続する地獄。どちらも、惨(むご)い日常だ。
今年もますます厳しいニッポンの師走。せめて、女が女を叩かない世界に生きたい。そのために女に仕事を! 子育て中の女へ差し伸べる手を!
※週刊朝日 2013年12月27日号