アジア旅行で、男性の“男らしさ”に惚れて帰国する友人に立て続けに会った文筆家の北原みのり氏。本誌連載「ニッポンスッポンポン」でこう綴る。

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 海外旅行に行った女友だちが、アジアの男たちの“男らしさ”に惚れて帰国するケースが続いている。

 例えば、モンゴルを旅した20代。馬を乗り回し、激しい民族舞踊を踊るモンゴル男子が忘れられない、と目を潤ませている。

「夜、たき火の周りに座っていたらキスされたんです。後で聞いたら、その場にいた女性全員にキスしてたんですけど。でも、あんな風に馬に乗れる男なら、いい!」

 写真を見せてくれたが、確かにエロかった。民族衣装を着ていてもわかる厚い胸板と太い腕、自信ありげに微笑む色気、女にストレートに欲情をぶつけるマッチョさは、東京の男には今や求められないものだろう。男の衝撃的なエロさに、彼女は日本で待っていたカレシ(文化系/細身)との連絡を絶ってしまったほどだ。

 ソウルを旅した40代の女友だちも、ふにゃふにゃになって帰ってきた。女友だちとタッカンマリ(鶏一羽入っている料理)を食べていたら、隣に一人で食事をしている青年がいたという。

「信じられる!? 彼、一羽まるごと、きれいに一人で食べたのよ!」

 その場にいた女たちは、もくもくと鶏を食べる男に釘付けになったそうだ。

 話を聞いてるだけで、私も身体が熱くなる。だって、鶏一羽まるごとだよ! 牛丼屋で「つゆだく、大盛り!」とか言ってるのとワケが違うんだよ! 私は彼女の話から、若い男が鶏を一羽食べきる姿を想像した。何度も想像し、じんわりと幸福な気持ちになる。ああいいわ~。というか、いったい、どれだけ普段満たされてないんだろう、私。韓国の見知らぬ若者よ、ありがとう!

 さて、日本の男子の皆さん、イヤな気持ちになっていらっしゃると思いますが、朗報があります。先日、韓国の女友だちが興奮して連絡してきた。

「日本の男の子って、いいよね! 細くて、小さくて、可愛いんだもん!」

 決してばかにされているわけじゃありません。ただ、人はないものねだりをする生き物。日本男子の良さは海外の女子の方が、わかってくれる時代なのかもしれません。お互いに、ね。

週刊朝日  2013年12月20日号