雅子さまが12月9日、50歳のお誕生日を迎えられる。29歳で皇室に嫁がれ、ハーバード大卒の外交官という華々しいキャリアに、多くの人が感嘆し、新しい時代の到来を予感した。歌会始(うたかいはじめ)で詠まれた歌に雅子さまの思いがにじんでいる。
皇室と歌とは、車の両輪のように歩みをともにしてきた。天皇や上皇の指示で古今和歌集などが編集され、今日でも、皇室では毎月、歌を詠む「月次歌会(つきなみのうたかい)」が開催されている。
このうち、毎年1月に行われるのが「歌会始(うたかいはじめ)の儀」だ。「歌御会始(うたごかいはじめ)」とも呼ばれ、記録上最も古くは鎌倉時代中期、亀山天皇の文永4(1267)年1月15日に開かれている。
1874(明治7)年以降は、天皇、皇后両陛下や皇族方に加えて、一般国民も参加できるようになった。現在は、共通のお題に対して、国内だけでなく海外からも応募を受け付けている。
「歌会始の儀」は厳格な雰囲気のなかで進められる。天皇、皇后両陛下や皇族方に加え、天皇陛下に招かれた召人(めしうど)や選者、一般の入選者の歌が、古式の独特の節回しで読み上げられる。
雅子さまが初めて参加されたのはご結婚後、最初のお正月となった1994年。詠まれたのは、ご結婚直後の93年8月、全国農業青年交換大会のために訪問された滋賀県での様子だ。
宿泊されていた彦根プリンスホテル(現・彦根ビューホテル)8階のスイートルームからは、眼下に広がる琵琶湖が一望できた。
〈君と見る波しづかなる琵琶の湖さやけき月は水面おし照る〉
皇太子さまと並んで窓の外を見ると、静かな湖面を明るく澄み切った月が照らしていました――
始まったばかりの皇太子さまとご一緒に暮らす日々。戸惑いもあったと思われるが、足を踏み入れた世界への大きな期待と喜びを、ゆっくりかみしめておられたことが伝わってくる。
「素直でまっすぐな表現をされていて、ゆるやかな調べが続いている」
そう評価するのは、京都大学短歌会出身で、現在は「読売新聞歌壇」の選者を務める歌人の栗木京子さん(59)だ。最後の「水面おし照る」という表現は「万葉集の中にある格調高い言葉です」。
※週刊朝日 2013年12月13日号