世界的に権威のある医学誌「ランセット」に「コーヒーを1日に7杯以上飲む人の糖尿病の発症リスクは、2杯以下しか飲まない人に比べて半分程度」という論文が載った。疫学調査では明確になっていないが、コーヒーを飲むと内臓脂肪が減るとの研究もある。また、慶應義塾大学薬学部衛生化学講座の田村悦臣教授の研究室では、コーヒーには女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの低下を抑える働き(大腸がんはエストロゲン量が低いと発症リスクが高まる)があることも突き止めた。

 糖尿病、肥満、大腸がん……。これらを防ぐだけでもコーヒーの作用に驚かされるが、コーヒー研究家で『毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)を今年9月に上梓した東京薬科大学名誉教授の岡希太郎氏によると、ほかにも世界中から多くの報告があるという。アルツハイマー病が少ない、うつ病になりにくい、しみができにくい……などなど。

 しかしなぜ、あの琥珀色の液体に多くの作用が期待できるのか。緑茶でも紅茶でもなく、コーヒーなのか。田村氏は、その理由についてこう説明する。

「コーヒーが他の飲料と大きく違うのは、原料の豆を約220度の高温で10~15分焙煎する点です。このときにさまざまな化学反応が起こり、多様な成分が合成される。その成分は1千種類以上にもなり、まだ明らかになっていないものもある。この中には薬になる成分も含まれている可能性があるわけで、多くの研究者が興味を持っているのです」

 昨今は研究者だけでなく、企業もコーヒーの健康効果に注目し始めた。「トクホ」としてすでに発売された商品もあるが、飲料メーカー以外にも、健康産業関係のメーカーなどが、ひそかに研究を進めているという。

〈健康的にコーヒーを飲むための5カ条〉
1.浅煎り豆と深煎り豆の両方を用いる(朝は浅煎り、昼は深煎りなど、別々に飲んでもOK)
2.まずは少量のお湯を注ぎ、十分に蒸らして成分を抽出させる
3.骨の健康が気になる人は、牛乳を入れてカフェオレに
4.1日3、4杯までをめどに
5.コーヒーフレッシュや砂糖は入れない、あるいは控えめに
(岡氏の監修による)

 浅煎り、深煎りの両方を用いる理由は、それぞれに含まれる成分が変わり、いろいろな効果が期待できるからだ。豆のブレンドが面倒なら、朝と夜などで飲み分けてもいい。

週刊朝日 2013年11月15日号