古くは「江川の空白の一日」から「KKコンビの明暗」、昨年の「二刀流・強行指名」まで、数々のドラマを生んできたドラフト。
一番の「勝ち組」は、やはり「当たりくじ」、松井(桐光学園高)との交渉権を引き当てた楽天だろう。
松井は鋭く曲がるスライダーを武器に、昨夏の甲子園で大会新となる一試合22奪三振を記録。今回最多の5球団が競合した。楽天の指名方針には、識者陣もそろって高評価をつける。楽天は今オフ、エース・田中の、メジャー移籍が濃厚。新たな投手陣の柱が求められていた。
元早大学院高監督で「流しのブルペンキャッチャー」として知られるライターの安倍昌彦氏は、「楽天には、やっぱり勢いがあるよね。マー君もメジャーに挑戦するなら、1年残って後がまを育てる義務があると思う」。
また野球専門誌「野球太郎」およびスマートフォンサイト「週刊野球太郎」の持木秀仁編集長は、「この夏は残念ながら神奈川大会で敗れましたが、コントロールの精度を高めたり、チェンジアップをものにしたり、と成長した様子は十分見えました」。
スポーツライターの佐々木亨氏も、「マー君の穴を埋めようという狙いどおりのドラフト。投手を8人取っているし、満足しているのでは」。
安倍氏は、楽天にはスカウトへの自信があったと指摘する。
「捕手の内田(常総学院高)もいい。座ったまま二塁へいいタマを投げられますから。3巡目以降で各チームの2、3番手投手も指名していますが、それぞれ光るものを持っている。そこにあるのは、スカウトが自分の持っている目利きへの自信、さらにはスカウトを信じて指名する、首脳陣のスカウトへの自信です」
ただ気になる「ジンクス」もある。朝日新聞の担当記者は言う。
「高卒の左投手はプロで通用するまで時間がかかると言われています。あれだけ騒がれた(菊池)雄星(西武)もプロで通用するまで3、4年かかりました」
生え抜き選手を育て上げ、リーグ優勝を勝ち取った育成力に期待したい。
※週刊朝日 2013年11月8日号