実は正常細胞はウイルスが感染すると、細胞内でのタンパク合成を停止してウイルスとともに自滅し、感染拡大を防ぐというシステムを持っています。つまり、自分を犠牲にして、からだ全体を守ろうとする。
これではウイルスは増殖することはできず、困ります。そこでウイルスはどうするか。細胞の自滅を阻止する遺伝子を働かせてタンパクを合成させ、増殖を続けようとするのです。
一方、がん細胞にはもともとこの自滅機能がありません。従って、ウイルスはがん細胞の中では、放っておいてもどんどん増殖できます。
これが、がん細胞がウイルス感染に弱い理由です。
ただし、野生のウイルスのままでは正常細胞もダメージを受け、人間は病気になってしまいます。どうすればいいか。正常細胞では増殖せず、がん細胞の中でのみ増殖するようなウイルスを人工的につくり、がん細胞に注入する。これがウイルス療法の概念です。
※AERA 2012年10月8日号