2009年に発覚した「鳥取連続不審死事件」。2件の強盗殺人罪などに問われた上田(うえた)美由紀被告(38)に対し、12月4日、鳥取地裁は極刑を言い渡した。しかし、この事件で上田被告が得た多額の金の使い道については、はっきりしていない。コラムニストの北原みのり氏が取材した上田被告とは?
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最後まで不可解だったのは、美由紀のお金の使い道だ。わかっている限り1千万円以上を得た美由紀は、そのお金を何に使ったのだろう。美由紀が暮らしていたアパートは、くみ取り式の便所だった。家賃は2万5千円だ。朝早くからコンビニに行き、おにぎりを20個買って子どもに食べさせたり、職場のスナックではママらに寿司をおごったりしていたというが、ブランド品や高級車に興味はなかったようだ。
美由紀の逮捕当時、大勢のマスコミが「ゴミ屋敷」と言われた美由紀の家を訪れた。家に入った記者の話が、忘れられない。足の踏み場もない部屋の奥の方に、食べたままの鍋が、まるでその周りを人が囲んでいたのが見えるような感じで残っていたという。ゴミの山の中には、料理がこびりついたフライパンやお皿も捨てられていた。美由紀は殆(ほとん)ど料理をしなかったという。次々に安い生活用品や食料を買い、家の中でゴミにしていったように見えてくる。
美由紀は小さな家で、どのように暮らしていたのだろう。今回、重要証拠となるはずの通帳の類は一切出てこなかったが、もしかしたら銀行口座すら、なかったのかもしれない。何台もの携帯を使っていたが、全てプリペイド式だった。障がい者や生活保護受給者からお金を奪うなど、保障制度に詳しい半面、自身は母子手帳を取ることもなく、自動車免許を持たずに運転をしていた。美由紀の軌跡をたどると、彼女が社会的な手続きから敢えて逃れるように生きていたのが、見えてくる。
※週刊朝日 2012年12月21日号より抜粋