人には幸福な「死に時」がある。がん治療第一人者で多くの生命と向きあってきた帯津三敬病院名誉院長の帯津良一医師(76)に、希望ある「旅立ち方」について聞いた。帯津医師は、生前に死のイメージをもつことが大切だと話す。
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西洋医学では抗がん剤が効かなくなると緩和ケアへと移行しますが、私が目指すホリスティック医学では代替医療を通じ、治しと癒やしを行います。まず戦略会議をする。患者さんの不安や悲しみをどう解決するか、湊方薬などの“武器”がないかを考えます。病気だけではなく人間全体をみて、「生老病死」をひとくくりで考えるので、がんの場合も治癒だけに執着するのでなく、死への覚悟を持つことに意識を向けていきます。
普段から死について考えられる人は、病気になった後のQOL(生活の質)が高いのです。
逆にこうもいえます。穏やかないい死を迎えるには、元気なうちから死をイメージしておくことが必要だと。具体的にいえば、自分が実現したい人生の幕切れを、映画のラストシーンのように思い描くといいのです。家族に手を握られたいとか、好きな曲が流れているといいというプラスのイメージ。そして、気管に管を入れたり、ドラマのように医者が胸の上に乗ってぎゅうぎゅう押す人工呼吸は嫌とか、受けたくない医療のイメージがあればそれも描く。
人生のラストシーン、つまり死生観が頭にくっきり描けたら、それを家族など身近な人に伝えましょう。日本人は、生前に死を語ることをずっとタブー視してきました。特にがんの場合、死ぬ話題は相手を傷つけるのではないかと神経質になりがちです。でも死を語り合うことは、後ろ向きの行為ではないのです。
※週刊朝日 2012年12月7日号