8月20日、ジャーナリストの山本美香さんが銃弾に倒れたアレッポ。シリア政府軍と自由シリア軍が激しい戦闘を続けるその街を、写真家・八尋伸氏がルポする。
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8月14日から20日まで、アレッポの激戦区サラーフッディーン地区で戦う反政府勢力の自由シリア軍と行動を共にした。首都ダマスカスで7月18日に自由軍による爆弾攻撃でシリア国防相らが殺害された後、呼応するようにシリア第2の都市アレッポでの自由軍とシリア政府軍の戦闘は激化した。
アレッポでは政府軍が支配する中心部を取り囲むように自由軍の支配区域が存在しているが、互いの支配区域が交わる最前線は細い路地が入り組み、敵味方が入り乱れていた。
突然路地の先から政府軍の戦車が現れ、砲撃される場面もあった。前線近くでは常にどこかで戦闘の銃撃音や迫撃砲の着弾音が聞こえ、空には政府軍のヘリコプターが飛び、自由軍の支配区域は戦闘機から毎日爆撃された。
不本意ながらアレッポの政府軍支配区域に入ってしまったことがある。そこには美しい街として有名なアレッポの日常があった。車と人が行き交い、ファッショナブルな女性が一人で歩いているのを見て、あまりに平和な光景にショックを受けた。
一方の解放区には廃墟と化したビルや住宅、疲れきった表情で少ないパンを求めて長蛇の列を作る住民。
シリアにアラブの春の風が吹いて1年半。まだ彼らに春は訪れてはいない。
※AERA 2012年10月8日号