尼崎で起きた連続変死事件の主犯格と見られている角田美代子被告の顔写真が11月7日に公開された。これは兵庫県警が「異例のサービス」として提供したものだが、被疑者の写真公開は国民の「知る権利」に他ならない、とニュースキャスターの辛坊治郎氏は断言する。
* * *
実は、日本でも今から20年ほど前までは、警察は逮捕時の写真を公開していたし、警察から検察に移送する際に被疑者の「ガンクビ」をメディアが撮影するのは当たり前のことだった。
ところが、かつて呼び捨てが当たり前だった被疑者に「容疑者」呼称が付与されるようになったのと時期を同じくして、「確定判決前に、無罪推定がはたらく容疑者を呼び捨てにしたり、顔写真を公開したりすることは人権侵害だ」と、一部のメディア学者や弁護士たちが声高な主張を始め、それに押される形で警察は、「批判されてまでメディアにサービスすることはない」と、逮捕時写真の公開をしなくなったのだ。
確認しておく。警察が逮捕時の被疑者の写真を公開するのは、メディアへのサービスではなく、公権力の行使を明示し、国民の知る権利に応えるためだ。
(週刊朝日 2012年11月23日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)