解剖学者の養老孟司さん(74)は、生物学者の池田清彦さん(65)との対談の中で、日本社会が異常をきたしている現状を打破するために、第二次世界大戦のように、日本は一度「クラッシュ」したほうがいいと主張している。
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養老:本音で、乱暴に結論を言うと、僕はきわめて楽天的で、この国はクラッシュでボカンといっちゃったほうがいいんじゃないかと思っているんです。
理由は二つ。いまの若い人たちがこんなに豊かにしていられるのは余裕があるからで、ここまできたら、ダメなやつはダメだからもう知ったこっちゃない(笑)。二つめは、日本人は「ジリ貧」に一番弱いんじゃないかと思うから。どうせ「貧」になるなら、一気に徹底してなるほうがいい。
池田:たしかに、どーんと下がっちゃえば、上がるしかないから、精神的にはそのほうが楽かもしれない。
養老:どんなにひどくても、この前の戦争より悪いときはそうないでしょう。物流はすべて止まり、食いものもない。僕はさつまいもをいまだに食いたくない。でも、当時世間が滅茶苦茶に壊れたかといえば、そうでもない。戦争で何百万人も死んだけど、外地から300万人も帰ってきて、住宅難で大変だった。日本人は破局のあとは強いんです。だから僕は心配していない。
※週刊朝日 2012年10月19日号