ECMOはその設備があるだけでなく、平時にも日常的にECMO管理をおこなうなど、経験豊富で熟練した医師、看護師、臨床工学技士による医療チームが必要で、看護が必要な度合いも高くなる。ECMOこそ「究極のチーム医療」と清水医師は言う。

「ECMOを実施するなら、ラーニングカーブと呼ばれるトータル30例以上の管理経験がある施設でないと、安全性は担保できないでしょう。経験の少ない施設などに対し、適切な助言や管理のできる転院先を紹介するのが我々窓口の仕事。今後、重症患者の増加によってECMO管理に優れた施設は飽和してしまう可能性もある。その前に、それに準じる管理が可能になるよう、全国のECMO可能な施設に準備を依頼しているところです」

 日本呼吸療法医学会は急性呼吸不全症例に対するECMOによる治療成績を上げようと、「ECMOプロジェクト」を立ち上げて、情報の共有、管理方法の勉強会や海外研修などをおこなってきた。参加施設はいまや全国93施設(2020年2月27日現在)だ。

 ECMOは「適応の可否の判断、導入のタイミングの見極めも重要」と清水医師は話す。

「内科医や救急医の場合でも、ECMO管理に日ごろ対応していない医師の場合、ECMO導入のタイミングを計り損ねてしまう可能性があります。肺炎が重症化してきて、人工呼吸器だけで症状の改善がみられず、悪化の兆候がみられるというときは早急にECMOの適応を考えなければなりません。医療従事者の方で人工呼吸器だけでは厳しいと思ったら、早めに相談窓口に連絡してほしい」(清水医師)

 相談窓口を担当するエキスパートの医師は、現場の医師から伝えられる患者の呼吸の状態や酸素の値などから、ECMOの適応や導入のタイミングを判断する。適応となれば、導入が早いほど救命率が高くなるという。

 清水医師によると、重症肺炎でECMO適応と判断された場合、状況次第ではその病院にエキスパート医師が出向き、そこで患者にECMOを導入してそのまま救急車に乗せ、管理可能な転院先に運ぶことも現在のところ可能だという。

「多くの医師に相談窓口の存在をまずは知ってもらい、ECMOで防ぎうる呼吸不全死をなくせれば」と清水医師は話している。(文/石川美香子)

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