お笑い第七世代ブームをけん引した霜降り明星。コロナ自粛の影響を受けるのか?(c)朝日新聞社
お笑い第七世代ブームをけん引した霜降り明星。コロナ自粛の影響を受けるのか?(c)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。日本でも感染者数がどんどん増えており、収束の目処は立っていない。

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 外国人観光客の激減によりインバウンドビジネスは大打撃を受け、感染拡大を防ぐためにコンサートなどのライブイベントも次々に中止に。北海道の全市町村では小中学校の臨時休校が決定した。さらに、安倍総理大臣は全国の小中学校・高校にも臨時休校を要請した。ウイルスという見えない敵を相手に、社会全体が重苦しい不安に包まれている。

 お笑いライブの世界でも、予定されていた公演の休止や延期が相次いでいる。主催者によっては、一定期間にわたって予定されていたすべての公演を休止することを発表しているところもある。

 お笑いライブの会場というと、多くの人はルミネtheよしもとやなんばグランド花月などの吉本興業の大型劇場を連想するかもしれないが、実際には、東京や大阪で開催されているお笑いライブの大半は、座席数50~100人程度の小規模なライブハウスを会場としている。客席の人口密度が高く、舞台にいる芸人と観客の距離も近い。最前列でお笑いライブを見ていると、必死でしゃべる芸人のつばが飛んでくるのも珍しいことではない。

 残念ながら、一般的なお笑いライブは新型コロナウイルスの感染リスクの高い環境で行われている。慎重な対応をしなければいけないのは仕方がない。

 だが、ライブを中心に活動している芸人にとって、この休止は致命傷になる。お笑い界でテレビなどのメディアに出て活躍している芸人は一握りだ。それ以外の大半の芸人はライブを主戦場としている。これが軒並み休止になってしまえば、彼らは強制的に目の前の仕事を奪われてしまうことになる。

 芸人にとってライブとは、それ自体が仕事であると同時に、客前でネタを磨くための格好の機会でもある。芸人のネタは台本に書くだけでは完成しない。実際に観客の前で演じて、その反応を見てネタを細かく調整する。この作業を繰り返しながら少しずつネタを仕上げていく。それが一切できなくなるのだから、ライブがなくなるというのは芸人にとって本当に大変なことなのだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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