大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 皮膚病のなかで、多くの人が、かゆみで悩まされるのが「アトピー性皮膚炎」。一方、「乾癬(かんせん)」という皮膚病の患者さんもかゆみを感じているといいます。しかし、そのかゆみの質は、アトピー性皮膚炎とは異なる可能性があるということが、最新研究でわかってきたそうです。『心にしみる皮膚の話』の著者で、京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が、かゆみについて解説します。

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 皮膚科では、かゆくない皮膚病とかゆい皮膚病があります。冬場になると肌が乾燥してかゆみが起きる人も多いのではないでしょうか?

 かゆみが強い皮膚病といえばアトピー性皮膚炎(アトピー)。アトピーの患者さんは、耐え難いかゆみと闘っています。「かくな」と言われても我慢できるかゆみではありません。日常生活での思考時間の多くを「かゆみを我慢する」ことに費やしています。

 アトピーと並んでアレルギー性の皮膚疾患で多いのが乾癬(かんせん)。欧米では、アトピーより乾癬のほうが患者数の多い皮膚病として、一般の人の認知度が上がってきています。

 乾癬はしばしば関節痛を伴う病気です。乾癬性関節炎という病気ですが、乾癬と関節痛が本邦で注目されるようになってきたのは、ここ10年ちょっとの話です。

 一方で、乾癬の患者さんのかゆみに関しては、あまり注目されてこなかったため研究が進んでいませんでした。

 アトピーや乾癬にかかわらず、かゆみのメカニズムは最近特に研究が進んでいる分野です。ちなみに、これまで解析されてきたかゆみの研究は、かゆみを誘発する代表物質ヒスタミンが中心でした。しかし、ヒスタミン以外にもかゆみを引き起こす物質があること、そして皮膚の末梢神経で何が起きているのかが明らかとなりつつあります。

 いま、世界中の研究者が注目しているのが、サイトカインとよばれる物質によるかゆみです。サイトカインはさまざまな病気や症状を引き起こす「体内を循環する鍵」のようなものです。鍵がそれに合う鍵穴にはまると、細胞が動き出し症状を引き起こします。

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