週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。病院ランキングだけでなく、治療法ごとの最新動向やセカンドオピニオンをとるべきケース、ランキングの読み方などを専門の医師に取材して掲載している。ここでは、「乳がん手術」の解説を紹介する。
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乳がんは、がん細胞が全身に広がることがあるため、手術に薬物療法や放射線療法を組み合わせる場合がほとんどだ。抗がん剤治療は、手術後に実施するのが基本だったが、最近は術前にするケースがある。大阪ブレストクリニックの芝英一医師はこう話す。
「がんを切除した後で抗がん剤治療をすると、効果がわかりません。術前ならがんが小さくなることで抗がん剤が効いていることがわかり、術後の経過が予測できたり、効かなければ別の薬に変えたりできるのです」
さらに、がんが小さくなることで、乳房を全摘しなければならなかった人でも、部分切除の可能性が出てくるというメリットもある。また、部分切除の予定だった人も、切除範囲が小さくなることで、よりきれいな形で乳房を温存できる場合もある。
聖路加国際病院の林直輝医師はこう話す。
「がん細胞の性質(サブタイプ)、がんができた場所や大きさ、リンパ節転移の有無などを考慮し、患者ごとの検討が大切です」
近年は、乳房再建術が保険適用になり、全摘後に再建する傾向もある。再建の方法には、自分のからだの一部である「自家組織」を使う場合と「インプラント」と呼ばれる人工物を使う場合がある。しかし2019年、日本で唯一保険適用されていたアラガン社のインプラントが発売中止となり、一時的にインプラントによる再建ができない状況になった。このインプラントが原因で悪性のリンパ腫を発症したとされる患者が確認されたことを受けての対応だが、海外の報告では約2200~3300人に1人発症するまれな合併症だ。現在はリスクが低い代替品が認可されているが、形状の質は落ちるという。